海の見える窓辺から

齢を重ねた時に好きな場所に住めるなら、坂のある海辺の街がいい。坂は街の表情を作る、と夫が言っていたのを聞いて、素直にめちゃくちゃ納得したからである。海については昔行ったポルトガルリスボンの景色が脳や目に焼き付いていて、あれは現地の雰囲気もあるのだけど、なんでも包んでくれるような、どんな投影も受け入れてくれるような包容力があるからである。

ポルトガルにはいろんな縁があって3回くらい行ったことがあるのだけど、何故だかなんとも言い表すことの出来ない郷愁のようなものを感じる街である。ヨーロッパだから地震も起きないだろう。カラオケもボーリングもゲーセンもポピュラーではない国だけれど、だからこそ人々は誰かとの語らいや自分だけの時間を楽しんでいるように見えた。そこには物質では替えのきかない、何か濃密なものがあるように思えた。シェリー酒を飲んで夫や家族と話す時間が、普段より特別だった。

話を戻す。歳をとって住むなら、海がよく見える小高いところに居を構えたい。日本なら長崎がいいな。できれば家族が近くに居ると最高だけど、叶わないならしょうもない話ができるジジババ友達がいるといい。そして少しお酒を飲める程度に健康な時間が、できるだけ長く続きますように。最期は花と眠らせてくれたら尚いいな、という独り言。